『月夜に映る花』
「このっ…ドアホがあああああ!!!!」
「ぶるぁ!」
月詠の怒声が空に木霊する。
そんな月詠のパンチを食らって倒れたのは銀時。
少年漫画のお約束で、扉を開けようとしたら先に月詠に開けられてしまい、胸を揉んでしまったのだ。
銀時にはそんなつもりは全く無いので心外といえば心外なのだが、そこは役得というものだ。
「お前ね、女扱いされたくねーんだったらそんくらいでぎゃいぎゃい言うんじゃねーっての」
「っ……」
胸を押さえながら口を噤む月詠を見て、銀時は大きくため息をついた。
立ち上がり、月詠に向き合う。
「…ン」
「んあ? なんだって?」
「スマンと言ったんだ」
月詠は、俯いて銀時を見ないままに言った。
「別に謝られたいんじゃねーんだけど」
「それでもすまないと思ったから、わっちは謝っている」
「強情な女」
今度はわざと、月詠に聞こえるようにため息をつく。
「そうだな…わっちは主に矛盾を強いている」
「はぁ?」
「女扱いするなと言えば、胸など触られても騒ぐものではない」
「おい、待てよ」
銀時が口を挟むが、月詠は俯いたままだ。
「そうじゃねぇって…」
「………」
落ち込んだように月詠は肩を落としている。
叱られた忠犬のようだ。
「いーんじゃねぇの。怒っても。俺が言いたいのは、肩肘はんなって事だ」
「………え?」
「女でいーんじゃねーかって事だ」
銀時を見上げるように月詠が顔を上げる。
「胸触られてきゃーって騒げばいいじゃねぇか。スカートめくりされたら相手ぶん殴ればいいじゃねぇか」
「わっちはスカートなんぞはかん」
「例えだ例え。とにかく、お前は女でいいんじゃねぇのか?」
「………」
月詠が言葉を飲み込む。
「オレは嫌いじゃねぇぜ? 女のお前」
「わっちは…」
「可愛いところもあるしな」
「なっ…! 馬鹿にするな!」
頬が真っ赤に染まる月詠に、銀時はふ、と笑った。
「何だ、やっぱりバカにしているのか」
「ちげーって。朱に染まった顔(かんばせ)が映えるなと思って」
「やはり馬鹿にしているだろう!」
月詠が更に怒るのを傍目に、銀時は月を仰いだ。
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という訳で銀月小説だった。
紅蜘蛛編での月詠ちゃんが可愛すぎたんだ…。
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